夜型人間がちゃんと寝て健康になった話
この記事は「mohikanz Advent Calendar 2021」1日目の記事です。
mohikanzがどういうコミュニティかについては4年前のこの記事↓ををお読みください。
今回はちゃんと寝た話をします。
技術的な内容ではないのでこのブログに書くかそれともnoteにでも書くか迷いましたが、仕事やら学習やらにプラスの影響が出たのでこちらに書くことにします。
TL; DR
早寝早起き朝ごはん
不健康極まった2021年夏
睡眠不足でずっとうっすらしんどかった2021年夏、自分はこんな悪循環に陥っていました。
- 朝起きられない
- リモートワークで始業直前に起きる
- お昼くらいまで頭が働かない
- 効率が悪いんで遅くまで仕事する
- 夕食作って食べてお風呂に入ったらもう日付が変わる
- そのあとなんとか本を読もうとするも、心身ともに疲れ切ってるので読み進められない
- なかなか進まないので本をダラダラ読んじゃって夜ふかし
- 頭を使うせいで寝付きも悪い
- 翌朝また起きられない
もともと寝付きが悪いので学生時代から睡眠不足になりがちだったのですが、リモートワークでいよいよ運動しなくなった上に「朝ここまで寝ててもいい」時間が後ろにずれたので、それが加速しました。
また、ストレスが食欲に行きがちなタイプなので、睡眠不足でストレスが溜まって食う量が増えました。
ただでさえ睡眠不足の人は太りやすい1のに、以前に輪をかけてお腹周りの浮き輪が大きくなってきました。せっかく4年前に10kg痩せたのに、ダイエット前の体重に元通りです2。
本を買ってきた
これはいかんということで、睡眠を改善してダイエットもしようと、とりあえずこれ
とこれ
を買ってきました。
科学雑誌(のムック)なので論文の引用に使えるほどではないですが、まあ、実用としては十分でしょう。
それから、ムックの購入を機会にもともと持っていた「睡眠のはなし」を開く機会も増えました。
そんなわけで、今回は睡眠を改善した話をメインにお話しします。
- TL; DR
- 不健康極まった2021年夏
- 本を買ってきた
- そもそもどれくらい寝たら睡眠不足じゃないのか
- 睡眠不足の悪循環を断ち切りたい
- 朝型と夜型
- お風呂に入るタイミング
- スケジュールを組んでみる
- ダイエットの果たした役割
- 実際に運用してみて
- まとめ
そもそもどれくらい寝たら睡眠不足じゃないのか
さて、なにから始めればよいのか、と思って上記ムック本を開くと、「睡眠負債」の話題が飛び込んできました。
8人の被験者が1日10時間は明るいところで活動、14時間は暗いところでベッドで横になる、という実験を行ったところ、初日は平均12時間ほどだった睡眠時間が徐々に短くなり、3週間かけて徐々に安定したとのことです。
8人平均の睡眠時間を実験前と安定後を比較すると40分ほど長くなっていたようです。安定後の方が本来必要な睡眠時間なわけですから、普段から睡眠が40分不足している人はそれを返すのに3週間かかるわけですね3。
しかし、自分にとって本来必要な睡眠時間とはどれくらいなんでしょうか?
前掲のムックを再び開いてみると、「個人差があるので睡眠日誌をつけよう」4とあります。平日と休日の睡眠時間にほとんど差がなくなれば、それが自分にとって必要な睡眠時間なんですね。
確かにおっしゃる通り「推測するな、計測せよ」なので、まずはこちらのアプリで睡眠日誌をつけることからはじめました。
記録するだけで意識するようになるもので、自然と睡眠時間を安定させるように努めるようになりました。
実際、しばらく継続してみたところ、睡眠時間は最初はガタガタだったのですが、
徐々に安定するようになってきました。
ここで、自分に合っている睡眠時間は6時間50分ほどだとわかりました。
しかし、これはあくまで眠っている時間。大事なのは布団に入ってから出るまでの時間のほうです。
睡眠時間から布団に入っている時間を算出するには「睡眠効率」という概念を使います。
睡眠効率とは布団に入っている時間のうち眠っている時間の割合をいい、これは85%以上が目標5だそうです。
85%だと布団にはいっている時間が長くなりすぎるので、90%に設定して(6+5/6)/0.9
を計算すると7.5925...
になります。布団に入っている時間は7時間半ほどだということがわかりました。
睡眠不足の悪循環を断ち切りたい
睡眠の記録と同時並行で、睡眠不足の悪循環を断ち切るのにも取り組みました。
そもそも悪循環の原因は、
- 仕事が遅くなるので、本が読みたければ夜にせざるを得ない
- なんか、なにもせずに寝るのが不安なので
- こういうの、「リベンジ夜ふかし」6というらしいです
- 夜に本読んでるので目が冴える
の2点でした。
これを解決するには、仕事から早く上がるか朝に本読むかです。
しかし、今やっている仕事量を減らしたところでやることはいくらでもあるし、早起きしても寝付きが悪いのですぐ夜型に戻るし、ということで、解決法はわかっているけど実行は諦めている状態だったのでした。
そんなときに読んでいた「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」に、このような記述が登場しました。
朝型の人も夜型の人も、目が覚めて数時間後にレポートを書きはじめるといい。脳が最も活性化する時間帯だからだ。その状態は四時間程度続く。朝の七時に起きる人は、一〇時から二時の間に作業能率が最も高まる可能性が高い。7
これを読んで、諦めていた「解決法」を再考せざるを得ませんでした。
なぜかというと、仕事の効率がそもそも悪いということがわかったからです。
だいたい10時半くらいに仕事を始めるとして、1時半くらいまで思うように進捗せず、お昼を食べて少し眠くなって進まず、調子が良くなりはじめる頃にはもう夕方になっています。
10時半に仕事を始めるなら10時くらいに起きるので、この本に従えばお昼くらいまでうまく頭が働かないのは当たり前で、ようやく調子が出はじめるタイミングを自ら食事で潰してしまっています。そりゃ進捗出んわ。
この状況をして「仕事量減らしてもやることはいくらでもある」なんて言っていたのが恥ずかしいですね。
始業の3時間ほど前に起きれば、頭がスッキリした状態で仕事できるので午前中にかなりの進捗を生めます。
じゃあ、起きてから始業までの3時間なにすればよいか? 読書をここに当てれば良いわけですね。
ピークでないにしても、起きて1時間半〜2時間もすれば十分に脳は働いているでしょう。
これを踏まえて、とりあえず理想の朝のスケジュールを組んでみました。
07:30 起床、朝食、支度 08:30 買い出し 09:00 本を読む 10:30 始業
なるほど、これが実現できれば本は読める、仕事の効率は上がる、リベンジ夜ふかしする要素がないのでリラックスできる、とまさに理想です。
しかしどうやって実現するのでしょうか?
すぐ夜型に戻ってしまう自分が、毎朝7時半に起きれるだなんて思えません。「朝型と夜型は生まれつき決まっている」なんてのも聞いたことありますし。
朝型と夜型
どうにかならないか、再び本を開きました。
体内時計の細胞では、時計遺伝子というタンパク質の設計図に基づいて時計機能を担うタンパク質が製造される。この細胞内での一種の化学反応が二四時間周期でゆっくりと変動し、直接一日という時間をとらえる。
(中略)
それぞれの時計遺伝子の塩基配列は、個体によって少しずつ違う。この微妙な違いで、作られるタンパク質の量的な変動によって生み出される体内時計の一日の周期には若干長くなったり短くなったりする。
(中略)
体内時計の周期が二四時間より長めだと夜型になりやすく、この周期が二四時間より短い、ないし二十四時間に近い場合には朝型になると考えられている。8
「朝型と夜型は生まれつき決まっている」というのを自分は誤解していたわけです。
これは体内時計の一日の周期、すなわち起きてから眠くなるまでの時間が生まれつき決まっているということに過ぎないのです。半可通、よくないですね。たとえ夜型でも、3時間早く起きれば3時間早く眠くなるのです。
これまで早起きしてもそれを定着させられなかったのは、やっぱり眠くなってもスマホ見たりゲームしたり本読んだりして夜ふかしする癖がついてしまっていたからでしょう。
また、普段から夜ふかししているので睡眠負債が蓄積して、1日くらい早寝しても遅起きになってしまっていたものと思います。睡眠時間が安定してれば、このようなことはないはずです。
このような誤解が生じたのは、日常語としての「朝型・夜型」と、「生まれつき決まっている」というときの「朝型・夜型」で意味が微妙に違うことにも原因があります。
日常語の「朝型・夜型」は「朝によく活動する人、夜によく活動する人」程度の意味ですが、「生まれつき決まっている」というときでは「早く眠くなる人、遅く眠くなる人」として使われています。
早く眠くなる人が早寝した結果、早起きして朝によく活動するようになりやすいのは確か(逆も然り)なので、誤解が生じるのはやむを得ない部分はありますが。
さて、ここでようやく「布団に入っている時間は毎日7時間半」とあわせれば、早起きを諦めなくてよいのでは?という考えにたどりつきました。
お風呂に入るタイミング
だいぶ外堀が埋まりました。せっかくなので、他にもできることを調べておきましょう。
寝る前にスマホ見ないみたいなのは基本として、お風呂に入るタイミングも実は重要なようです。
体の深部体温は体内時計による覚醒レベルと連動しており、入眠に向けて下がっていきます9。
お風呂に入るのが入眠の直前だと深部体温が下がりにくいため、入眠しにくくなることがあるようです。
本には「就寝の2時間程度前」と書いてありますが、とりあえず直前を避けることだけを意識することにしました。
スケジュールを組んでみる
ここまでに挙がった内容を総合すると、以下のようになります。
- 自分は、布団に入っている時間は7時間半くらいがベスト
- 夜型でも、起床時間を早めれば就寝時間を早められる
- 睡眠負債が溜まっているとこれを維持できないので、「7時間半布団に入っている」はキープする必要がある
- 起床の3時間後に勤務開始を設定
- 寝る直前の入浴は避ける
そんなわけで、ようやく理想の一日のスケジュールができあがりました。
07:30 起床、朝食、支度 08:30 買い出し(出社する場合は通勤) 09:00 本を読む 10:30 始業 14:00 空腹で集中力が切れ始めたあたりで昼食 20:00-21:00 終業 22:00 夕食~入浴 24:00 就寝
この手のスケジュール、完璧を目指すとまずうまく行かないのですが、重要なのは朝に3時間のバッファがあることです。
就寝が1時間遅くなったら起きるのを1時間遅らせて睡眠時間をキープしたり、忙しいときは本を読まずに始業してしまったりと融通が効きます。
これを目指して、0時に就寝して7時半に起きる生活を始めました。
ダイエットの果たした役割
そんなわけで、実際に7時半起床で7時間半睡眠をキープする生活を始めてみました。
その一方、同時並行でダイエットを始めています。
筋トレとタンパク質大量摂取で筋肉を付けて基礎代謝を上げつつ、摂取カロリーが消費カロリーを上回らないようにしてじわじわ痩せていくという、まあ王道のダイエット法です。
なぜこの話をするかというと、ダイエットが睡眠の改善に大きな役割を果たしたからです。順に見ていきます。
寝すぎた翌日に筋トレをすれば、少し早く寝られる
当然ですが、運動すれば眠くなります10。これを利用することで、寝すぎた場合や寝付きが悪かった翌日にカフェインをたくさん採ってしまった場合もすぐ睡眠のリズムを戻すことができます。
ジム週1、家トレ週2でやってるので、3日以上リズムがズレっぱなしになることはなくなっています。
タンパク質が多い朝食が体内時計をリセットし、夜間の眠気に変わる
夜は代謝が落ちるので、ダイエット中は摂取カロリーを朝に寄せなくてはいけません。また、筋肉を効率良くつけるため、タンパク質は大量摂取します。
これらが睡眠に強くプラスに作用しました。どういうことかというと、筋トレ用の朝食が体内時計のリセットに役立ったのです。
体内時計にはリセット機構がある11こと自体はよく知られた話で、朝日を浴びることでリセットされるのもよく知られていますが、食事がリセットを促進することは一段知名度が落ちるのではないでしょうか。
こんな論文をみつけました。
朝食のインスリン分泌は肝臓の体内時計をリセットさせる効果が報告されているので、朝食における糖質とタンパク質の適度な摂取は、体内時計のリセット効果を促進すると考えられる。12
筋トレのためにこんな朝食を毎朝食べているのですが、
これが偶然上記の条件に当てはまったため、夜はしっかり眠くなり、寝付きが格段に良くなりました。
実際に運用してみて
そんなわけで、7時間半睡眠と週3筋トレ、毎日朝食を組み合わせてしばらく継続してみました。
感想としては、最高です。
- 余裕を持って仕事を始められる
- 午前中にちゃんと仕事の進捗が出る
- 朝に読書を済ませているので、夜は焦らずのんびり過ごせる
- 夜は勝手に眠くなる
- 忙しいときは早く始業することで勤務時間の調整が可能
- 疲れたときは睡眠時間を後ろに延ばせるし、延ばしてなお余裕を持って仕事を始められる
- リモートワーク時でも朝に昼食の買い出しができるので、昼休みにゆっくりできる
- 朝食をしっかり摂るので昼食を遅らせられ、夕食までの間隔が小さくなるので間食が減る
元の悪循環が嘘のようです。
やってることは早寝早起きで朝ごはんをちゃんと食べるという小学校で教わるようなことですが、道徳や教義のように教えられるのでなく、調べて納得感を持つだけで全然違いますね。
それと、筋トレが偶然プラスに作用したことにも助けられました。
やっぱり適度な運動は大事なのだなあ。ダイエットは2ヶ月半ほど続けて、体重はあまり減ってませんが体脂肪率が3%落ちたので見た目はだいぶスッキリしました。
まとめ
- 睡眠負債が溜まらない睡眠時間を計測してそれを守った
- 夜型でも早起きすれば早く寝られることに気付いてやってみたらできた
- 筋トレでブレを補正し、朝食で体内時計リセットを促進した
長々と語ってきましたが、言いたいことは「早寝早起き朝ごはん」これだけです。
今回は出典をちゃんと明記することに気をつけてみましたが案外大変ですね。ただ、情報の信頼性の意味で読んだ人が確認できるのは大事なので、なるべく続けていきます。
それでは。
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Meeta Singh(2005), The association between obesity and short sleep duration: a population-based study - PubMed↩
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今回は肌も荒れました。これが年齢か……↩
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脳は15分寝つけないと1時間は寝つけない(2021/11/23閲覧.), Webメディアで出典がないので信頼性には疑問がありますが、まあ目安の値を取るためということで↩
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昼間を無駄に過ごし、夜更かしする「リベンジ夜更かし」は自傷行為--人民網日本語版--人民日報(2021/11/23閲覧.) 期間指定でググるとこの記事が初出ですが、中国のネットスラングなんでしょうか?↩
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Piers Steel(2011), Procrastination Equation: How to Stop Putting Things Off & Start Getting Stuff Done, Pearson Education(訳:池村千秋(2012), ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか, CCCメディアハウス, pp.206)↩
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きちんとした出典は見つけられていませんが、運動をするとグリコーゲンが消費されてそれを補うためにブドウ糖が分解されて血圧が下がって眠くなるようです。栄養学の教科書かなにかに書いてありそう↩
-
福田 裕美(2019), 概日リズム調節における光と食事の影響に関する研究動向, 日本生理人類学会誌/24 巻↩