ポモドーロ・テクニックを誤解していた話
昨年の後半は遅い時間の退勤が続いていたのですが、仕事中にTwitter見たりぼーっとしたりしてる時間が長かったのでどうにか集中したいと思って、ポモドーロ・テクニックに本気で取り組んでみました。
ポモドーロ・テクニックについては「25分集中して5分休憩を繰り返す」という程度の認識しかなく、何度か取り組んではすぐやめて、を繰り返していたのですが、この際原典に当たってしっかりやろうということで、提唱者自身が書いた本を買ってきてじっくり読み込んでみました。
結果、ポモドーロ・テクニックに対する誤解がたくさんあったので、ここに記しておきます。
ポモドーロ・テクニックについての誤解
誤解1: 25分+5分のサイクルを繰り返すと自然に集中できる
僕は漫然と「25分+5分のサイクルには何か脳の仕組みに根ざした理由があって、集中力が維持しやすいのかなー」なんて思っていましたが、それらしい内容は原典では全く語られていません。
これは全くの逆で、時間を区切ることで頑張って集中するのがポモドーロ・テクニックなのでした。
実際、原典内ではポモドーロの中断を「内的中断」「外的中断」の2つに分けてそれぞれへの対処法を詳しく述べているほか、「中断した場合はポモドーロとしてカウントしない」という厳しいルールを課して、こなせるポモドーロを増やしていくよう訓練することをアドバイスしています。
「自然に集中できる」なんて銀の弾丸はどこにも落ちてませんでした。残念。
誤解2: 乗っているときは休憩を無視してやり続けて良い
タイマーをスタートした後、調子の良い時は集中してしっかり作業できるわけですが、時間が来てもせっかくの集中がもったいない気がして作業を続けてしまうことがあります。
しかしこれはNGで、実際にやってみるとわかるのですが、わざわざ集中を切ってでも5分休憩した方が1日トータルで集中できる時間が長くなります。 ポモドーロ・テクニックは集中するきっかけを与えるだけでなく、過度な集中でバテてしまうのを防ぐ意味もあったのでした。
誤解3: 1日の最初にとりあえず始めて、仕事はやりたいところまでやる
何も考えずに1日の初めにタイマーをスタートさせると、何をやって良いかわからなくてしばらくボーッとして、やることの整理を始めたあたりでもう1ポモドーロが終わってしまいます。
こうして作業を一つ終わらせた後も、「次何しよう」なんて考えていると休憩時間がズルズルと延び、結局消化できるポモドーロが減ってしまいます。
詳しくは後述しますが、原典には最初のポモドーロで1日の計画を立て、その通りに実行して予定通りに帰る流れが書いてあります。
漫然と行うのでなく、計画的に行うことによって「次何するんだっけ」の時間を減らして効率よく作業を行うことができます。
実際のポモドーロ・テクニック
原典によると、大まかに以下のような手順で進めるとのこと。
- やることの洗い出し
- 「仕事の在庫」のリストにやるべきことを書き出す
- 見積
- 「仕事の在庫」から重要な順に「今日やること」のリストに移動する
- 「今日やること」の各項目を1ポモドーロ(25分)を最小単位として見積もる。このとき、見積が大きくなりすぎる仕事は分割する
- ポモドーロをこなす
- タイマーをスタートして25分作業。終わったら5分休憩
- 4ポモドーロごとに長めの休憩
- 気が散ったり誰かに割り込まれたりして中断しそうな場合は、書き出して作業に戻る
- 万一中断してしまった場合は、そのポモドーロを無効にする
- ポモドーロが終わったら
- 気が散った原因を次の作業予定に割り込ませたり「仕事の在庫」に入れたり諦めたりする
- 見積と実際にかかったポモドーロ数とを比較してふりかえる
漫然とサイクルを繰り返すのではなく、「きちんと計画を立てて見積をし、ふりかえって精度を上げる」という王道中の王道のテクニックでした。
なんでこんなに25分+5分がひとり歩きしてるんですかねえ。と思ったら原典の日本語版タイトルがそうでした。繰り返しますが、25分+5分という時間は脳科学に基づいた魔法のようなアレコレじゃありません。良くない。
実際にやってみて
これまでも朝や前日に何をやるか/どれくらいかかるかは考えてからやっていたのですが、ポモドーロによる見積を導入することで、やりたかったことをやり切れる確度が上がりました。
見積を行う際に仕事の内容を軽く確認するので、ポアンカレのインキュベーション1が働くのか仕事自体の見通しがよくなりました。
逆に、困っているポイントとしては、
- 朝に時間を長く取るので手を動かし始めるのが遅くなる
- 見通しの立ちにくい作業はタイムボックスを設ければ良いが、見極めがシビアでドツボにハマる時がある
くらいでしょうか。
あと、25分+5分に慣れてくるとタイマースタートすることで集中が高まるようになる効果がありました(肌感)。これも一種の条件反射ですかね。
余談: ポモドーロ・テクニックとスクラムが似ているという話
ところで、特に原典に言及があるわけではないですが、ポモドーロ・テクニックの流れはスクラムにそっくりです。
ポモドーロテクニック | スクラム |
---|---|
「仕事の在庫」のリスト | プロダクトバックログ |
「今日やること」のリスト | スプリントバックログ |
見積と予定表の作成 | スプリント計画 |
ふりかえり | スプリントレビュー/レトロスペクティブ |
実際、「見積を行って実行して検査して改善する」あたりは経験主義に基づいており、25分+5分のサイクルによってもたらされる「集中することで時間の無駄を省く」「休憩を挟むことで1日の価値を最大化する」あたりはリーン思考に基づいていると言えそうな感じ。
原典の内容は「スクラムのプロセスを個人の仕事に適応させるためのアレンジ」と言えるかも知れません2。
スクラムを個人に適応させるために導入したと思われる25分+5分が、
- タイマー開始を集中を始めるためのきっかけにする
- 休憩を自然に取れるようにする
- 見積を小さな値にするための最小単位を導入
- 1サイクル30分でスケジュールを立てやすくする
と何役もこなしていて天才的。
まとめ
- ポモドーロ・テクニックを誤解していた
- 原典にあたってみると見積とふりかえりを繰り返す王道のテクニック
- 使ってみると仕事の見通しが立ちやすくて良い感じ
- 余談: ポモドーロテクニックはスクラムと似ている
そんなわけで、25分+5分が一人歩きしてしまっている感がありますが、みなさん原典に一度は当たってみてはいかがでしょう。
- ポアンカレのインキュベーションと二次試験 - 俺はSTEAM育児とお菓子作りで家族からの評価を上げたい↩
- 実は原典には「個人だけでなくチームでポモドーロテクニックを実践する方法」もかなり紙幅を割いて書かれているのですが、正直全くピンときてないし、上手くいくとも思えないので言及してません。納期が厳しいときに使うと機能しそうであるけど、有り体に言えばマイクロマネジメントの仕組み化なので、チームが慣れるほど実践するにはストレスが高そう↩